ゴルフの渋野日向子(しぶの・ひなこ)プロが快挙!
『2019年(第43回)全英女子オープン』において、樋口久子プロ以来(1977年全米女子プロゴルフ選手権)、日本人42年ぶりとなるゴルフの海外メジャー大会に勝利しました。
日本のゴルフ史上2人目となる歴史的勝利です。(日本男子ゴルフで海外メジャーに勝利した選手はまだいません)
※大会概要
- コース:ウォーバーンゴルフクラブ (イングランド)
- 全長:6,756ヤード、パー:72
- 賞金総額:450万ドル(約4億7,700万円)、優勝賞金:67万5,000ドル(約7,200万円)(1ドル=106円換算)
令和に突如登場したシンデレラストーリー
まだ日本の女子プロになりたての若干二十歳(はたち)
渋野プロは、1998年生まれのまだ20歳の新鋭プロゴルファーです。
畑岡奈紗プロや勝みなみプロなど、同世代に早くもプロで勝利をあげた選手を多数輩出している”黄金世代”のひとりです。
しかも渋野プロは、高校卒業後のプロテストに一度不合格となって、二度目のプロテストに合格したばかりですので、今年がプロとして実質初めてのシーズンでした。
一気にスターダムへ
プロデビューしたばかりの今シーズンでしたが、5月に行われた日本国内のメジャー大会のひとつである『ワールドレディスチャンピオンシップ』で初優勝すると、7月に『資生堂アネッサレディスオープン』で早くも2勝目をあげる快進撃を続けています。
全英女子オープンへの出場も、出場選考条件を決める最後の大会で4位となったことで、本人も思ってもいなかった出場権が転がり込んできた強運をみせ、それ故本人も「目標は予選通過」と述べていたほどでした。
もちろん、海外初挑戦がこのメジャー大会でした。
世界の”スマイルシンデレラ”へ!
海外メジャーの壁に阻まれてきた日本女子プロゴルフ界の歴史
1977年樋口久子プロの海外メジャー初勝利以降も、日本の女子プロゴルフ界の選手は、あと一歩というところまで迫っては跳ね返されてきました。
リーダーズボードのトップに、日本人選手の名前が表示されることもありましたが、あと一歩勝利まで遠い42年間でした。
※日本人女子プロゴルファーの主な海外メジャー成績
- 岡本綾子プロ:2位(6回)・3位(4回)
- 小林浩美プロ:3位(1回)
- 福嶋晃子プロ:2位(1回)
- 宮里藍プロ :3位(3回)
- 不動裕理プロ:3位(1回)
- 宮里美香プロ:2位(1回)
- 畑岡奈紗プロ:2位(1回)
数多くの女子プロが、涙をのんできました。
ここに並ぶ名前を見渡しても、日本女子プロゴルフ界に名を刻むそうそうたるビッグネームばかりです。
それだけ、海外メジャーはフロック(まぐれ)では優勝できないことを意味しています。
三日目単独トップで最終日へ
初日2位タイで好発進した渋野プロは、二日目には単独2位となりました。
ところが、最終組で回ることになった三日目の前半9ホールでスコアを崩してしまい、トップとの差が開いてしまいます。
これまでの日本人選手がメジャー挑戦に破れてきた光景が、再現されたかのような流れでした。
しかし、渋野プロは盛り返します。
バック9で6バーディの猛ラッシュにより、三日目にはついに単独首位(2位とは2打差)に躍り出ます。
果敢に攻めた最終日
日本人42年ぶりのメジャー制覇がかかった最終日、いきなり3番ホールでダブルボギー。2打差の貯金を一気に吐き出してしまいました。
そして、世界ランク1位・2位の韓国コ・ジンヨンプロやパク・ソンヒョンプロなどが猛追してきて、渋野プロはどんどん順位を下げていく大混戦の展開になっていきました。
これまでの日本人メジャー挑戦ならば、そのまま順位を下げてしまうであろう、まさに最終日のしびれるこれぞメジャーという展開になっていきました。
ところが渋野プロは違いました。
この大会を通じて彼女の起点となった10番ホールでバーディを奪うと、猛チャージをかけていきます。
渋野プロが勝負どころとみたのか、12番ホール303ヤード・ミドルホールのパー4のティーグラウンドでドライバーを手にします。
世界ランカーがどんどんバーディを重ねている状況とはいえ、まだまだ勝負には早い段階でしたが、渋野プロは勝負してきました。
うまくいけば”攻めのゴルフ”となるものの、失敗すれば優勝から遠のく”無謀な賭け”となるほどのチャレンジです。
結果はみごとワンオンに成功し、イーグルパットこそ逃したものの、そのホールでバーディを奪い首位争いに食い下がります。
”チャレンジ”と”無謀”は紙一重ですが、挑戦しないと手にすることができないのもメジャーです!
そして圧巻だったのが、最終18番ホール。
入れば優勝、2パットでもプレーオフというロングパットに対し、ここでも渋野プロは強くストロークしていきました。
下りのパットでしたが、難しいラインをしっかりと読み切ってカップイン。
渋野日向子プロがメジャーをとった瞬間でした。
パットがラインを描き、渋野プロが高々とパターをかかげる映像。
絵になる選手です!
試合後のインタビューでも「18番で決めるために強く打ちました。ダメなら3パット(2位を意味する)覚悟でした」と本人が応えていたのが印象的でした。
世界が名付けた”スマイルシンデレラ”
絶やさぬ”笑顔”
絶やさぬ”ファンとの交流”
しかも、まだ日本女子プロになったばかりの二十歳の選手です。
そんな渋野プロに世界のメディアが名付けたニックネームが、
”スマイルシンデレラ”
解説の方が新人類と形容していたほど、メジャー勝利がかかる大一番でも、笑顔を絶やさず通路ではファンとのハイタッチを繰り返していました。
おにぎりや駄菓子のタラタラを食べたり、コーチと雑談する映像が流れていました。
メジャー勝利がかかる大一番で、緊張しない人はいません。
ましてや今回は世界ランカーが猛チャージをかけてきて、もうだめかと思える展開を何回もはねのけての優勝です。
僕が思うに、最終日の後半ホールが進むにつれて彼女の陽気さは増していきましたが、プレッシャーを制御するために、陽気さを解放していたんだと思います。
笑うから結果がついてくる
優勝した瞬間、TVのアナウンサーが「結果がでるから笑うのか」それとも「笑うから結果がついてくるのか」と実況したときに、樋口プロが「笑うから結果がついてくるのよ」と即答していました。
ピンチのときに笑顔するのは、分かっていてもなかなかできるものではありません。
連日の寝不足と、またメジャーに届かないのかという展開を、みごとひっくり返してくれた”スマイルシンデレラ”渋野日向子プロに感謝したいです!
※追記:今大会直後の世界ランキングが14位となり、2020東京オリンピックの日本代表圏内に入ってきました。こちらも、今後の活躍に目が離せません。