大学生

経営学部の大学生に、まずは読んで欲しい名著3選

大学で進学する学部選びにおいても、最近の時代背景を反映して、理系学部の人気が急騰しており、文系においても法学部や経営学部などのような”実践的な”学部に人気が集まっています。

僕も経済学部でした。

大人になって会社経営に携わったとき、「経営って何なのか?」と自問自答する日々でした。

そんなときに、僕のバイブルとなった書籍があります。

上級生や、会社の実務に携わるようになったときにオススメする書籍は他にも多数ありますが、経営学部を志す学生や経営学部に入学したての学生には、まずは「実践する経営者」自らが著した書籍に触れることによって、”経営者の熱意や想い”を感じ取って、そこから漠然とでも経営とは何ぞやと肌感覚を持って欲しいという理由から3冊選びました。

大学の授業は座学的な内容が中心となってくると思いますが、経営は実践です!

経営学部に進む大学生に向けて、経営書を100冊以上読んだ僕の蔵書から、誰もが知る大経営者が著した、文書量も記載内容も「”わかりやすい”はじめの書」を選びました。

1:『一勝九敗』柳井正(やない・ただし)氏著(2006年)

ユニクロ創業者・柳井正氏

大学生も日常的に利用する”ユニクロ”(ファーストリテイリンググループ)創業者である柳井正氏の著です。

昔はよくあった町の洋品店(小都商事)に生まれた柳井氏が、ごく普通の大学生活を平々凡々と送った(本人弁)後、家業を継いだことが、世界的企業へと発展したユニクロの始まりです。

柳井氏の大学生時代は、まさに日本が高度成長期の真っただ中でした。

自身もジャスコ(現・イオン)に就職(すぐに退職したようですが)したように、地域に大型店舗が登場し始めた時代であり、すなわち家業の個人商店が少しずつ窮地に追いやられていく時代背景でもありました。

同時に、アオキや洋服の青山などが登場した時代でもありました。

そんな大資本に対して正面から対抗できないと目した柳井氏は、”カジュアル”路線に活路を見出します。

そして、父親の死を機に家業の跡を引き継いだ柳井氏は、”ユニークな衣料”という意味合いを込めて、ユニーク・クロージング・ウエアハウス=ユニ・クロとして、1984年に広島に第1号店を開店します。

ユニクロの始まりです。

ここを読んで欲しい

時代は右肩上がりであったとはいえ、そのことは、町の洋品店や中小企業が、大資本によってどんどん淘汰され始めた時代でもありました。

そんな零細資本の社長である柳井氏が、どういう将来ビジョンを持って会社のかじ取りをしていったのか。

会社が大きくなる過程において、どれだけの失敗をしたのか。

”一勝九敗”!

後の大経営者でさえ、10回挑戦して1回成功すればいい方だと振り返っています。

ただしそのことは、9回失敗しても10回チャレンジする精神であるともいえます。

また、柳井氏がチャレンジを始めた当時の経営理念が、そのままユニクロという巨大資本となった今にも引き継がれている点を注目して読んで欲しいです。

本書そのものは簡単に読める文書量ですが、創業者の持つエネルギーとチャレンジ精神がひしひしと感じることができ、経営学部に進む大学生の最初の一冊としてうってつけの書籍です。

2:『道をひらく』松下幸之助(まつした・こうのすけ)氏著(1968年)

経営の神様・松下幸之助氏

”パナソニック”(旧・ナショナル、松下電器産業他)の創業者である松下幸之助氏の著です。

”事業は人なり”

松下氏が、創業以来大切にしていた経営ポリシーです。

「社員は家族」という理念のもと、工業製品を扱う松下電器産業においては、時代がどんなに機械化されていっても”人”を大切にしてきました。

その精神は社内ばかりではなく、昔は町のいたるところにナショナルの代理店となる個人商店が存在し、お客様にとって身近な存在でした。

会社-代理店-お客様

みんなが幸せになるようにと願ったのが、松下氏でした。

バブルがはじけた日本経済下において、当時大手企業はどんどん人切りによる安易な合理化を進めて企業体質を強化しましたが、パナソニックだけはギリギリまで人員削減に手をつけることには消極的で、本社も創業の地(大阪)に置くことにこだわりました。

社員はもとより、本社周辺には多くのそれで生計をたてている人たちがいたからです。

バブル崩壊間もない平成前半、早々に人員削減をした家電メーカーが息を吹き返し、そのことに消極的であったパナソニックが窮地にたたされる時代もありました。

ところが平成の後半になると、それまで優位であると思われていた日本の家電メーカーが、逆にあれよあれよという間に廃業に追い込まれたり、外資に身売りするハメになっていきました。

あれだけ世界を席巻していた日本の家電メーカーで、現在も日本企業として生き残っているのは、パナソニックだけじゃないのかという状況になってしまっています。

それは何故か?

松下氏が創業以来守ってきた、”人”を大切にする企業理念と無縁ではないように思えます。

ここを読んで欲しい

この書籍は、見開き1項目で構成された、松下氏の随筆風なつくりとなっています。

1項目を読むのに、ものの1~2分で読めてしまいます。

しかしながら、その短い文章の中にこそ、松下氏の経営エッセンスが凝縮された渾身の想いが感じ取れます。

従って、どんどん読み進めるよりも、1項目読んだら頭の片隅に置いておいて、日々の勉強や経験でその真髄をかみしめてから次の項目を読む。

そして、何回も読み返す。

そんな読み方をオススメします。

この書籍を大学生時代に何回も読み返し、社会人になってもふと読み返し・・・そんな書籍です。

発刊から50年を経ても、いまだに世の経営者の座右の書として定番となっている、色あせない名著です。

3:『経営学』小倉昌男(おぐら・まさお)氏著(1999年)

ヤマト運輸生みの親・小倉昌男氏

”クロネコヤマト”を世に送り出した小倉昌男氏の著です。

今でこそ、全国いたるところで当たり前のように配送しているヤマト運輸ですが、宅急便として事業を開始した当初は、全国を股にかけるためには”規制”との闘いでした。

当時は地域をまたぐ配送には、今では想像もつかないようなガチガチの規制が網羅されていました。

また、わずか数百円で個人宅へ小さな荷物を運ぶなんて、誰もが大赤字になると発想もしない状況でした。

当時の民間配送業者の主収益は、大企業との大口配送だったからです。

そんな時代背景の中、小倉氏が活路を見出したのが、今では当たり前となっている”個人宅への個別配送”です。

「赤字との闘い」と「郵便局への宣戦布告」です。

当時の郵便局は”国営”ですので、まさに国へ宣戦布告をしたのが、当時のヤマト運輸でした。

将来の会社経営の柱としての経営戦略としてはもちろんのこと、小倉氏の”お客様の利便性”という経営理念が感じとれる名誉です。

ここを読んで欲しい

本当はこの書籍が、ハーバード大学教授であるマイケル・E・ポーター氏が著した『競争の戦略』と共に、僕のバイブルです。

なぜ3番目に紹介したかというと、大学に入学したての学生にとって、最初の1冊としては、ちょっとだけ敷居が高いからです。

まずは、先に紹介した柳井正氏の『一勝九敗』や、自分で気に入った経営者の書籍を数冊読み終え、この書籍にトライしてみて欲しいです。

『一勝九敗』が、柳井氏の経営理念を中心にユニクロが巨大企業となっていく様を描いていることに対して、この『経営学』はより実践的なケーススタディとしての内容となっています。

ネットじゃなく書籍を読む

最近は、なんでもネットで調べる風潮です。

それはそれで便利な世の中になりましたが、紙媒体の書籍に触れることには大きな意味があります。

僕が書籍世代だからかもしれませんが、書籍を読むときは紙を肌で感じます。

自分の手で紙に触れてページをめくるたびに、著者である経営者の熱意や想いが伝わってくるような感覚があります。

何回も、何回も、同じページをめくったり元のページに戻ったりも、紙の書籍ならではの感覚です。

今回取り上げた3冊も、偶然創業者(同等)の書でした。

書籍の中から、経営学としてのハウツーよりも、むしろ創業期の熱意に触れて欲しいと思っています。